2020年から、希望者を募り「発達障害の特性と、筆跡は関連性があるか?」という研究を続けてまいりました。
この時期は、コロナの感染者が蔓延して当初予定していた人数のサンプル数が集まらず
とても少ない数での集計となってしまったので 信ぴょう性は低くなってしまいましたが、
ひとまず集計した結果から考察したレポートを報告いたします。
(大学の論文のようにきっちりとルールに則り、時間をかけて取り組むことはできませんでした。)
筆跡には、その人の性格や行動特徴が現れることが分かっています。(日本筆跡心理学協会)
それが生得的(遺伝)なものなのか、その後の環境(性格)なども関係しているのか
発達障害の特性をもとに検証してみることにしました。
例えば、文字の線が他の文字にかかる「線衝突」などの性格は”攻撃性の強さ”を表しますが、
同じ発達障害傾向を持つ人たちでも二次障害(パーソナリティ障害等)を発症するとは限らないため、
筆跡特徴のデータと50の質問に回答した内容を総合することで、
生得的な特性かどうかが明らかになると考えました。
対象者は高校生から高齢者まで、平均年齢39.3歳で135人という少数からのデータで集計しました。
50の質問に、参加者自身が回答するのですが、発達障害診断のある人も定型発達の人も含まれていて
対象者のエリアが広いうえに、「こうあるべき」という理想の姿を想像しながら無自覚に回答された方も含まれている可能性があります。
特に、ADHD傾向の人たちは自覚のある場合が多いのですが、
ASD傾向の人たちは”客観的に自分を見つめることが苦手”という観点からも、正確に反映されていない可能性が考えられます。
ですから、「私はADHD傾向が強い」と思っていたとしてもASD傾向かもしれないという
両方の側面を持っていることを気に留めておいた方が良いです。
サイトでの表記の都合から、結果(細かい数値)は省略した上での考察になりますが、
結論は【発達障害の傾向と筆跡に直接の関連があることは認められない】ということです。
そして今回は数少ないサンプルから抽出したことや、
申告式の質問紙での信ぴょう性の低さなども影響した結果となりました。
その中で、数値・観察などから推測できる点を書き留めます。
発達障害傾向を持つ人たちの特性はある程度限定されていますが、
【それに伴うパーソナリティ形成や精神障害等に共通点があります】
強いこだわりによって考え方が偏ってしまったり、コミュニケーションが苦手なために自分の世界に入り込み、
自問自答のみで価値観を築き上げたりすれば性格にも特徴が現れます。
つまり、二次障害などの影響が文字に現れると考えられます。
例えば、「口」などの二画目が、一画目の始まりとくっついている特徴は
考え方が真面目で融通が利かないという筆跡になります。
二画目の角が丸いか、角ばっているか、尖っているかでも性格が異なります。
これらを踏まえてASD・ADHDそれぞれの特性に直接関係はないけれど、
共通する性格などが影響している文字特徴を抽出しました。
集計結果から読み取れたこと
「口」「国」「田」などの文字の1画目と2画目がくっついているのは、真面目できっちりとした性格であることを表しています。 また、偏とつくりの間の空間が狭いのは、他人に対しての厳しさを表しています。これらがASDタイプでは多かったです。
文字の左右の組合せや上下の組合せ内で線が重なり合うのは、感情のコントロールや衝動性を表す部分で、ASD傾向が低くADHD傾向の高い人に見られました。
隣の文字と重なり合うのは線衝突と言い、トラブルを暗示するものになります。
一般的に人はトラブルを避けたり予測したりして自制することが可能ですが、線衝突が起きる人は先の予測ができなかったり分かっていても止められないといった特徴があるかと思われます。
文字をまっすぐに書くことができない「行うねり」については、ASD・ADHD傾向共に高いタイプでは半数以上に見られました。 これは、前も後ろも見ない、過去も未来も見ないというタイプではないかと推測します。つまり「今この瞬間」を見るタイプです。
文字そのものにつぶれが起きている原因は、ASDでは生きるエネルギーの弱さを表し、ADHDでは面倒くささやせっかちさを表します。 文字間の広さでは、ASDでは急かされたり人に指示されることを嫌い、自分のペースで行いたいという気持ちの表れから広くとられており、 ADHDではせっかちで早く書き終えてしまいたいなどの焦りが生じたために狭くとられていたと考えます。