コミュ障に不足しているもの
カウンセリングルームWhereaboutsを訪れる人では、比較的多い事例のお話になります。
他の年代にも、もちろん言えることではあるのですが
特に、みんなを認めて受け入れる教育をされてきた20代〜30代の人たちの中には「コミュ障」と呼ばれる人が多く存在しています。
年齢に限定するわけではないですけれど、色々な事例を経て感じているのは【質問を省略する】傾向があるということでした。
本来、コミュニケーションとは、ただ自分の話したいことを話すものではないですし、
相手の話したいことを聞いているだけでもありません。
また、共通の話題しか出してはいけないということでもありませんし、話が合わない人とは関わってはいけないということもないのです。ですが事例の中においては、このような感情を ちながら周囲と関わっている人が、意外にも多いことが分かっています。
コミュ障と呼ばれる人たちの特徴は、発達障害傾向を持つ人が一番に浮かびます。
「言葉が出てこない」
「受け止め方や感じ方が特殊」
「怒りのスイッチが一般的と異なる」
「人に興味がない」
「余計なことを平気で言う」
発達障害の傾向がない人でも【人と関わった経験が薄い人】は、似たようなことが起こり得ます。
また、家庭環境などが理由で自分の意見を言わせてもらえなかったり、親とのかかわり方が歪であればそうなります。
原因はさまざまですが、【関わりのズレ】によってコミュ障が起こるのは否定できません。
では、 当事者たちは質問をやめたことでメリットがあるのでしょうか?
強いて言えば、余計なことを言わないので【トラブルにはなりにくい】ことは考えられますが、
度が過ぎると「つまらない人」と思われたり「どうでもいいのか」と感じられたり、
最悪の場合は【自分が無い人】というレッテルを張られてしまう可能性があります。
例えば、会社の会議に出席しているときに「○○さんは疑問などはないですか?」と振られることがあります。
最初の頃は「特にありません」と言ってやり過ごすことはできますが、年々立場が上がるにつれ、部下が増えるにつれ
自分が率先して解決していく必要性が出てきたときに【質問ができない】となると、とても困ることになるでしょう。
質問をやめる、ということはその場の状況が【いかに不本意でも】流されるしかないということと言えます。
また、質問を省略して一番心配なのは【分かったフリをすることで周囲からの信用をなくしてしまう】ことです。
その逆に、分からないから質問をしているのに「そんなことも分からないの?」「さっき説明したでしょ」などと面倒がる人がいます。
いちいち質問をしてきて欲しくない、関わるのが面倒くさいという気持ちから態度も良くなく、突き放してくることもあるでしょう。
これでは、コミュニケーションは成立しません。
【コミュニケーションは相互のやり取り】なのですから、どちらか一方が止めてしまえば終わってしまうのです。
質問に丁寧に答えてあげられないのも、質問ができないのも、どちらともに課題はあります。
さらに質問の種類でも、【自分のことを聞かれるのがイヤ】という人もいます。
相手に興味を持って聞いているのに、【知られることで弱みを握られる】といったマイナスのイメージを持つ傾向の人がいて
こうなってしまうと当然コミュニケーションは成立しません。
このタイプの人も現代の若者と言われる年齢層に多く存在します。
時々、言いにくいことや言って良いのか判断に困る内容のこともありますよね。
そういう時、遠まわしに言って伝われば良いのですが、そもそもコミュ障と呼ばれる人たちは【遠まわしな言い方では理解できない】
傾向を持っているので、伝える側はとても勇気が要ることと思います。
そして、それを察知してくれないことに対して怒りを感じて「言わなくても感じてくれ」などと、つい求めてしまいがちです。
この「言わずに感じる」は、【どんな人間にも不可能】と考えられます。
行動心理から多少読み取ることはできても、それはあくまでも統計などに基づいた話であって、本当にそれが当人に当てはまるか
どうかは誰にも分からないのです。無意識の領域であるならなおさらです。
【自分の思いは、言葉で表現するのが一番正しく伝えられる方法】ということを忘れないでください。
コミュニケーションに難有の人たちは、まずは【自分の認識から変える】必要があります。
相手の人の課題はさておき、言われたことをそのまま受け止めて【質問を返さずに未消化で終わらせる】ことを
繰り返すことにより、さらに人との関わりが難しいものになっていきます。
【分からなければ質問してもいいのだ】という考え方を自分に教え込むことが大切です。
「言わなくても分かるでしょ」と返されたら「もう少し理解を深めたい」とか「言い回しを変えてみて欲しい」などと
要望を伝えることも大切です。
その会話のやりとりこそが【コミュニケーション】なのです。
本来のコミュニケーションの意味合いが現代では変わってきているのかもしれません。
でも人間が昔から求めているのは、会話を繰り返しながら相手を理解して分かりあい、時にはぶつかっても
そこにお互いの本音が隠れていてそれが分かる。
ただ楽しい話をするだけもコミュニケーションですが、
相互に【疑問を突き詰める】コミュニケーションが理解を深めていくポイントです。